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第6話 「山菜の季節」

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すっかり初夏の陽気だね~。生ビールがおいしいよ。波ちゃんおかわり!

沢辺さんの季節がやって来ましたね。はい、生ビールおかわりお待たせしました。

(ゴクゴク)
ぐはー、何杯飲んでもうまいね!夏はやっぱり生ビールだね。

ずいぶんと気が早いですね。夏はまだまだこれからですよ。
それにちょっと前まで冬はやっぱり生ビールって言っていませんでしたか?

テヘヘ、そうだったかな。
じゃああらためて、いつ飲んでも生ビールはうまいね!!ところで今時期のビールに合うおつまみ何かある?

沢辺さん、グッドタイミング!昨日マスターの田舎からたくさん山菜が届いたところなんですよ。

おっ、山菜いいね!どんなものがあるの?

はい、ふきのトウ、タラの芽、こごみ、花わさび、わらびなどがあります。
いろいろ仕込んではありますが、まずはフキノトウとタラの芽の天ぷらからお出ししましょう。

いいね!それをお願いします。

沢辺さん、どの山菜もとてもおいしいから色々召し上がってくださいね。

さては波ちゃん、また一通りつまみ喰いしているね!?

お客様に正確な情報をお伝えするためですよー!

(ガラガラ、、。)

こんばんは、、。

あっ、滝沢くん、いらっしゃい!
ちょうどよかった、これから山菜の天ぷらを揚げるところなのよ。

おっ、滝沢青年。また飯を喰いに来たのかい!

今日も連絡してあげたのよね!マスターの田舎から山菜が届いたって。

はい、ありがとうございます、、。
あっ、でも今日は生ビールからいただこうかな、、。

よーし、一緒に乾杯しよう。

(ガラガラガラー!)

お疲れさまでっす!

涼ちゃん、いらっしゃい!

あれ、なんかいい匂いがするね!
とりあえず生ください。

涼ちゃんもいいタイミング!
いま山菜の天ぷらが揚がるところなのよ。
マスターの田舎から届いたばかりなの。

ラッキー! 私も一緒にもらいます!

~(フライヤーで山菜天ぷらの揚がる音)~
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生ビールと山菜の天ぷら、おまたせしました~!

お好みでお皿に添えてある塩を少しつけて召し上がってみてください。


乾杯~!いただきま~す!

おいし~!フキノトウのさわやかでかすかな苦み、たまんないね~!

タラの芽の天ぷら、初めて食べたけどサクッとした食感と香りが新鮮~!

おいしいです!、、。衣をつけて揚げただけですか、、。?

はい。フキノトウはとてもアクが強く、包丁で切ったあと水にさらさないと切口がアクで茶色くなるほどです。タラの芽も大きくなると苦み、エグミが強くなるので、芽が出たばかりの小さなものを選んで採ります。
おひたしなどにする場合はいずれもアク抜きをして使いますが、天ぷらの場合はそのまま衣をつけて揚げてしまいます。するとある程度アクは抜け、ほのかな苦みを逆に旨みとして楽しんでいただけるんです。

なるほど、除去してしまうのではなく、持ち味を活かすってことね!

他には何があるんですか?

ではコゴミの白和えと花ワサビのゴマ和えをどうぞ。

コゴミはやさしい食感と味で色もキレイ!

花ワサビはピリッとした香りと独特の苦みがいいね~。
またビールが進んじゃうよ!

おいしいです!、、。同じ山菜でもまったく違うんですね、、。

はい。コゴミ(クサソテツ)はアクがほとんどなく強いクセもありません。採りたてなら生でも食べられるくらいです。
塩ゆでにして冷水にとると鮮やかな黄緑色になるので、白和えにしてやさしい彩りと持ち味を活かしました。一方、花ワサビは皆さんよくご存じのワサビの花芽の部分です。ワサビはすりおろして細胞がこわれると辛味成分が生成されますが、この花芽の部分も同じです。塩をたっぷり振りよく揉むことでアクが抜け独特の辛味が出てくるのです。この辛味を出す作業を「ワサビを怒らせる」とも言いますが、その怒らせたワサビの花芽を茹でて冷水で引き締めゴマ和えにしました。コゴミとは反対に強く手をかけることで独特の旨み(辛味)を引き出している訳です。

まったく性格の違う素材に同じことをしてもだめってことね。

しかし、マスターは色々なことをよく知っているねぇ。

そう言えばマスターはどうして建物のことに詳しいんですか、、。

はぁ…。
ただ衣食住と言われますが、皆さんが生活をしていく上で基本となる食をより豊かにするのが料理、住をより豊かにするのが建設の仕事なのだと思います。どちらも材料を調理・加工し物を作るわけですが、どちらにも言えることは心や思いがこもっていなければ良いものは出来ないということではないでしょうか。そう考えると料理も建設も同じなのかもしれませんね。

なるほど。うちの親父は技術や知識は自分で勉強したり現場経験を積めば身につくけど、物作りに込める思いは人との関わりのなかでしか身につかないって言ってるよ。それは料理も建設も同じってことね!

親父さん、良いこと言うねぇ。

涼ちゃん、沢辺さんとは初めてだったわね。沢辺さん、涼子さんはお父さんの経営する建設会社で働く現場女子なんですよ。

いえいえ、私なんかまだまだ駆け出しなんですけど、会社には地方から若い人もたくさん来ていて。仕事だけでなく、若い社員の住むところや毎日の食事に会社はもっと気を使わなくちゃいけねぇって親父はいつも言っています。衣食住に込める人の思いを感じなくちゃいけねぇって。

ますます良いこと言うねぇ!

親父、仕事を教えるのは厳しいんだけどそういうところはやさしいんだよな~。

・・・・・

滝沢くんも良い仕事が見つかるといいね!
涼ちゃん、滝沢くんも初めてだったわね。滝沢くんは涼ちゃんより少し年上だけどいま就職活動中なの。

そうなんだ!私もまだまだ新人だけどよろしくです。

よろしくお願いします…
涼子さん…は建設関係の学校で勉強してたんですか?

私?ぜんぜん関係ない…っていうか、そもそもあんまり勉強は好きじゃなかったから! 確かにうちで働いている人は専門の学校を出ている人もいるけど、親父が言うには仕事に必要な知識は現場経験を積めば身につくから大丈夫だって。日々勉強ってやつです!

そうだよ、早くからやりたいことが決まっているなら専門分野の勉強はしておいた方がいいと思うけどなかなかそうもいかないからね。俺だって今の仕事(第3話「味のしみた煮物」参照)になってからも新しいやりがいを感じてマスターにも勉強させてもらっているよ。

へぇー、ビール飲みに来ているだけじゃないんですねぇー。

あはは!勉強のついでに飲んでいるんだよ。もう一杯おかわり!

私も!

僕も…!

生ビールおかわりお待たせしました!
あと、これはワラビの煮物2点盛りです。

おいしそう! 緑色と茶色のものがあるんですね!

はい。ワラビは大変アクが強く、そのまま食べると中毒を起こすほどです。そこで灰や重曹を使って一晩かけてアク抜きをします。そのうえで調理をするのですが、アク抜きをした後、何日も天日に干して乾燥させ保存食にしたりもします。今お出しした茶色い方は昨年保存したものを水で戻して煮たものです。緑色の方は今年のワラビをアク抜きしてすぐ煮たものです。

緑色の方は香りもあって若々しい感じがして良いし、茶色の方は味に深みがあって口当たりも良いね!

そうですね。保存したものは熟成されうま味も増すように思います。

一年思いを込めたって訳ですね!

うまいこと言うね~!
アクがあったりおとなしかったり、どんな素材も手をかけて思いを込めれば美味しくなるってことだ。

涼ちゃんのお父様がおっしゃるように、新入社員さんへの指導も同じなのかもしれませんね。色んな個性、経歴を持った若い人が来るわけですから。でも仕事に厳しいってことは煮たり焼いたりもするのかしら?

あはは!うちの親父、そんなことはしませんよ~!

人の暮らしを豊かにしたい、誰かを幸せにしたいという思いを形にする方法は料理や建設の他にも色々あるのだと思いますよ。そうやって世の中の人は誰かのために働いているのでしょうね。

うーん、なんかやる気出てきた~!

はい…!

ではもう一度みんなで乾杯~!


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よかったですね、山菜であんなに盛り上がって。マスターの仕込みは大変そうでしたけど、、

そうだね。
(思いがこもっていなければ良いものはできない、でしたね)

はい?

いや、涼子さんのところの社長、お元気かなと思って。
波ちゃん、明日もよろしくね!


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いつも居酒屋アクアにご来店いただきありがとうございます。
本日ご来店の涼子さんの会社と同様、株式会社アクアでも地方・未経験を問わず積極採用をしております。ご関心ございましたらぜひお問い合わせください。

<第6話 完>

※本ストーリーはフィクションであり、実在の人物・団体との関係ありません。

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